由梨と別れてから1年が経った。
由梨と別れてから、俺は嫁の話を聞くようになった。
好きになれるわけではないが、最初の約束くらいは守るべきだと思うし、
だが、嫁は突然離婚届を渡してきた。
「離婚して」
「…うん」
ペンを手に持つ。
「あんたにとってはさ、苦痛な期間だったと思うけど」
「ん?」
「一緒にいれば好きになってもらえると思ってたんだよ」
「…うん。」
「浮気もしても、最終的に私のところにいてくれると思ってたんだよ。」
「…うん、」
「私は、…好きだったんだよ」
「そう…、だったんだな」
「…今まで解放してあげらんなくて、ごめん」
嫁からそんな言葉が出てくるなんて思わなかった。
俺は、なんの覚悟もなく責任とか言って結婚して、働いて金だけ入れて、責任を取ってるつもりだった。
でも、そういうことじゃないんだろ?
今はわかるんだ。
今までずっと最低だったのは俺だ。
「……お前が謝るところじゃないだろ、」
「え、、っ」
「その、お前の気持ちは、知らなかったけど…、…応えてやれなくてごめん。
子供のこととかも任せっきりでごめん。」
驚いた顔をする嫁。
でもみるみるとその顔は歪んでいく。
「…っ。うぅ…」
「…俺だけ、大人になれてなかったよな」
泣きながら首を振る嫁。
俺は、誰一人幸せにしてやることが出来なかった。
当たり前だ、ずっと人のせいにして生きてきた俺が人を幸せになんかできるはずがない。
離婚届に判を押してはじめて嫁と向き合った。
「あんた、変わったね。」
「そーか?」
「あの子のおかげでしょ。」
「あー…。」
「…じゃあね、お互い人生無駄にしないように生きてこ」
由梨、俺はお前に会いたいよ。
お前はもう忘れてるか?