そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】


「そうだったんですか……」


間に合って良かった……ってホッとしていたら、もう事務所に到着したのか車が静かに止まる。見た感じはヤクザの事務所とは思えないお洒落なビル。


多摩雄のおっちゃんに案内されエレベーターで5階に上がり、少し歩くと頑丈そうな鉄の扉が現れた。


「三重構造になっている防弾扉です。機関銃で撃たれてもビクともしませんよ」


自慢げに笑う多摩雄のおっちゃんにドン引きの私。


「襲撃されたこと……あるの?」

「えぇ、何度か……しかしご心配なく。全て返り討ちにしてやりましたから」

「あ、そう……」


私がここに居る間は撃ち合いなんてありませんように……と祈りながら事務所に入り、ユウキが居るという部屋へと急ぐ。


外から鍵が掛けられた四畳半ほどの薄暗い部屋にユウキは居た。


「ユウキ……」


私の声に反応し、こっちを向いたユウキの顔を見た瞬間、私は言葉を失った。


ユウキの顔からは生気が感じられず、目は死んだ魚みたいにトロンとしている。


「……鈴音か?」


声にも張りが無く、まるで別人のよう……


「ちょっと、おっちゃん、まさかユウキに変なクスリとか使ってないよね?」

「まさか……コイツは全てを失ってショックでこうなってしまったんですよ。自業自得です」

「そう……」


私はユウキの隣に座り、あの彼女のことを話した。けど、ユウキはほとんど無表情で目を伏せたままだ。


「ねぇ、最後に彼女に会ってあげて?子供を抱いてあけてよ!」


堪らず声を荒げた私を見てユウキが寂しそうに笑う。


「嘘だ……俺はアイツに酷い仕打ちをした。そんな俺を心配してるはずがない。会ったらまた俺を殺そうとするさ」