ユミちゃんの勘違いを、私はあえてスルーした。
彼女と過ごす最後の夜だもん。暗く沈んだ話しはしたくない。私は自分の気持ちを悟られないように精一杯、明るく振る舞った。
「じゃあ、また明日。おやすみ~」
「うん、おやすみ」
いつもと変わらない挨拶も今日が最後だと思うと無性に寂しくなる。
自分の部屋に戻り再び荷物をまとめ始めたが、気付けばボーッと陸さんのことを考えていて、なかなか進まない。
もう!しっかりしろ!鈴音!
自分に激を飛ばし頬をパンパンと叩いた時だった。
「あぁっ!!」
私は大切なことを忘れていた……それは、警備員のおっちゃんとの約束。ユウキを想い続けている彼女の願いを叶えてあげるって言っちゃったんだ……
でも私は明日、東京を離れる。陸さんが帰って来る昼までにここを出なきゃいけない。もう時間がない……どうしよう……
このまま忘れたことにして帰ってしまおうかとも思ったが、彼女のことを思うとそういうワケにもいかない。
だって、彼女の辛い気持ちが痛いほど分かるから……私も最愛の人を諦め島に帰ろうとしてる。彼女と同じだ。
それに、私が東京に出てきた意味を残したいとも思ったんだ。
ここに来て、私は沢山の人に助けられ今日まで頑張ってこれた。でも、私は皆に何をした?……何もしてあげれてない。
せめて何か一つでいい。誰かの役に立ち、ここに来て良かった。誰かを幸せに出来たんだ。と堂々と胸を張って島に帰りたい。
そうだ……今ならまだ間に合う。
ユウキに会いに行こう……そして、彼女の願いを叶えてあげよう。
私はバックを持ち立ち上がった。



