そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】


「ごめんな……さい」


そう言うだけで精一杯だった。


『あ、いや、なんもなければいいんだよ。鈴音も俺の付き添いで自分の時間無かったからな。お前が元気ならいいんだ』


ダメだよ……陸さん、お願いだから優しい言葉なんて掛けないで。じゃないと……私……


『でな、退院が決まったんだよ。だから少しでも早く鈴音に教えてやりたくてさ』

「えっ……退院?」

『あぁ、明日の午前中に退院出来ることになった。宅磨が迎えに来てくれるって言うから鈴音は来なくていいぞ。

それと、帰る前にちょっと行きたいとこがあるから、そっちに着くのは昼過ぎになると思う』

「そ、そう……分かった」


明日、退院……もっと先だと思っていたから動揺を隠せない。ボヤボヤしてたら陸さんが帰って来ちゃう。その前にここを出ないと……


電話を切り、慌てて荷物をまとめていたら部屋のドアが開きユミちゃんが入ってきた。


「あれ~鈴音っち、何やってんの?」

「う、うん……ちょっと部屋が散らかっていたから片付けてました…」

「ふーん、そっか~で、今夜の夕食何がいい?」

「夕食……」


そうか……ユミちゃんと食べる夕食も今日が最後なんだ……


何も知らずニコニコ笑ってるユミちゃんを見てるとなんだか切なくなる。彼女にはホントにお世話になったもんね。


大切な大切な私の友達……


「ユミちゃんさん、今日は私が夕食作ってもいいですか?」

「えっ?鈴音っちが作ってくれるの?」


せめて今までのお礼に、このくらいさせて欲しい。


そして私が最後の夕食のメニューに選んだのは―――


「お母さんのオムライスの作り方、教えてもらえますか?」


ユミちゃんが私に初めて作ってくれたフワフワ卵のオムライス。