そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】


「ええ、もちろん本気よ」


女性の声に驚きカーテンを開けようとした私の手が止まる。


「でもな、他人の子供を育てるってことは、愛莉(あいり)が思っている以上に大変なことだぞ」


子供って……誰の子供のこと言ってるの?それに、愛莉って……誰?


「そうね、そうかもしれない……でも、ちゃんと考えて出した結論だから……愛する人の子供なら、我が子として育てていけるはず。心配しないで」

「そうか……愛莉が決めたなら構わないが……俺は愛莉と別れた後も、お前には幸せになって欲しいとずっと思ってたんだぞ」


あ……もしかして、子供ってチビちゃんのこと?そして、この愛莉って人は、陸さんが処女の女性と関係を持ち、その女性が妊娠したことが原因で別れた結婚を考えてた元カノ?


その元カノが、チビちゃんが居ることを承知で陸さんの元に戻って来たってこと?


「相変わらず陸は優しいわね」

「優しくなんてないさ……俺は愛莉を裏切ったんだから……」

「だから、そのことはもういいの」


カーテンの隙間から艶やかな元カノの黒髪と横顔がチラッと見えた。


綺麗な人……私とは全然タイプが違う。陸さんホントはこんな女性が好みなんだ……


「でも新聞で陸の名前を見つけた時は驚いたわ。ナイフで刺されて意識不明の重体とか書いてあるんだもの。慌てて陸が入院してる病院探したのよ」

「心配掛けて悪かったな。でも、この通り元気だよ」


二人の穏やかな笑い声が病室に響く。


陸さん楽しそう……愛莉さんが来てくれて嬉しいんだね……


陸さんが今までちゃんとした彼女を作らずセフレとばっか付き合ってきたのは、愛莉さんのことがまだ好きだったから?彼女のことが忘れられなかったから?


「あぁぁ……」


居たたまれなくなった私は病室を飛び出していた。