「どうして?せっかくばあちゃんと仲直りしたのに……」
「琴音ちゃんは、鈴音ちゃんのお父さんと暮らした思い出の詰まった家に帰りたいと思ったみたいでね、また琴音さんとぶつかるようになったんだよ。
静香さんは、二人の子供を抱えてまともな生活なんて出来るワケがない。ましてや産まれたばかりの鈴音ちゃんが居れば働くことさえままならない。そう言って琴音ちゃんを説得しようとしたんだけど、琴音ちゃんの決心は揺るがなかった。
で、結局、琴音ちゃんは東京に帰ることになり、船で島を出る日、見送りに来てた静香さんが、まだ時間があるからと一緒に船に乗り込んで別れを惜しんでいたら……
出港直前、鈴音ちゃんを抱いて船から降りてしまったんだよ」
「えっ……」
お母さんは焦って私を取り戻そうとしたそうだけど、タラップは外されていて巡航船は出発してしまった。
こうして私は、ばあちゃんと島に残ることになった……
「それから琴音ちゃんは何度も鈴音ちゃんを返してくれと島を訪れたらしい。でも、既に静香さんに懐いていた鈴音ちゃんは、静香さんと言い争う琴音ちゃんを怖がり、全く受け入れなかったみたいでね。
それで琴音ちゃんも諦めたみたいだよ」
そんなの全く記憶にはない。でも、お母さんは私を捨てたワケじゃなかったんだ……拒絶したのは私の方だったんだね。
でも……
「どうしてばあちゃんは、お母さんは死んだなんて言ったんだろう?」
すると社長が、これは自分の想像だけどと前置きして話し出す。
「静香さん、寂しかったんじゃないかなぁ~母親が生きてるって知ったら、いつか鈴音ちゃんは自分を置いて島を出て行ってしまうんじゃないかと思ったのかもしれないね。
実の娘は自分より死んでしまった旦那を選んだワケだから、鈴音ちゃんだけは手放したくなかったのかもね」



