何が起こっているのか分からずオロオロしている私の足をバーバラが引っ掻き、その痛みで我に返る。
まだ眠っているチビちゃんを抱き上げ部屋を見渡すと、少し開いた窓の外で赤く揺れる炎が見え血の気が引いていく……
「うそ……火事?」
そこからのことはよく覚えてない。気付けばチビちゃんとバーバラを抱え喫茶店の外で震えていた。
近所の人達も集まってきて必死で火を消そうとしてくれてる。暫くすると誰かが通報してくれたのか、消防車が到着し、ものの数分で火を消し止めてくれた。
「お嬢さん、大丈夫?」
声を掛けてくれたのは近くに住むおばちゃん。
「怖かったろ?最近、この辺は物騒でね。放火が続いてるんだよ。発見が早くてボヤで済んで良かったね~」
「はい……有難うございます」
おばちゃんにはそう答えたが、私には何か引っ掛かるモノがあった。
本当に、連続放火魔の仕業なんだろうか……
その疑問は焼け跡を見て、更に大きくなる。
だって、燃え残っていた残骸はユミちゃんが読み終えたファッション雑誌の束。これは数日前、ユミちゃんが店の横の狭い路地に置いてた物。
それをわざわざ人目のつく店の前に持ってきて火を付けている。そして、その真上が私の部屋……これは偶然なの?
もしかして、以前、私を襲ったイカれたおっちゃんの会社の人の仲間がしたことだったら……
"まだ終わってない"という言葉が頭の中でこだまする。
バカバカしくて全く信じてなかったけど、おっちゃん達が言ってた源氏が私を狙ってるって話しは本当だったのかも……
ゾクッと寒気がして、再び襲ってきた恐怖に体が硬直する。



