そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】


再び体を壁に押し付け、陸さんがマジマジと私の顔を見つめる。


もう私達の間に言葉はなく、お互いを愛おしむように視線を絡めていた。


―――陸さんの長い睫毛が揺れている……


「……鈴音」


消え入りそうな小さな声で名を呼ばれたと思ったら、大きな手が優しく頬を包み込む。


陸さん……好きです……


心の中でそう呟きながらソッと目を閉じその時を待った。


彼の吐息を感じ、いよいよ唇が触れる……そう思った時、陸さんはいきなり私を突き離したんだ……


えっ?どういうこと?


「陸さん?」


彼の背中に戸惑いながら声を掛けると、俯き拳を握り締めた陸さんが大きく首を振り、吐き捨てるように言った。


「やっぱり……無理だ。こんなこと、許されない……」

「何言ってるの?許されないって、なぜ?」


彼は振り返ることなく首を振り続けている。


「今ここでお前にキスしたら、俺は自分の気持ちを押さえ切れなくなって、必ずお前を抱きたくなる。そうなったら……」

「陸さん、私……陸さんが好き……大好きなの。だからいいの……」

「……ダメなんだよ。俺とお前は……」


そこまで言って振り返った陸さんの顔は、とても辛そうで苦悩に満ちてた。


でも、好きだからこそ聞きたい。どうしてあなたを求めちゃいけないのかを……


「私を抱いたら……どうなるの?」


すると陸さんはフッと寂しそうな笑みを浮かべため息混じりに呟く。


「パンドラの箱を開けることになる……」


それだけ言うと陸さんは厨房の方へと歩きだし店を出て行く。一人になった私は薄暗い店内で暫く考え込んでいた。


はて?パンドラの箱って、何?パンドラさんって人が持ってる箱のこと?てか、パンドラさんって誰?


「ねぇ、バーバラ、分かる?」