一瞬ドキッとしながらも、そう返した。

理人しか知らないのだ。

あの日の晩の出来事は。歩には、バレたくないと思った。

…足早に、その場を離れ、家路についた。


部屋に入り、そそくさと身の回りの用を済ませていく。

疲れていたせいで、食事を作る気にもなれず、

カップラーメンで済ませた。

土日は、ちゃんとした料理をしなきゃと思いながら。

…午後11時。

やっと布団の中に潜り込んだ。

・・・ピンポーン。

こんな時間に、来訪客が。

…鍵も、チェーンもかけている。

私は恐る恐るドアに近づき、覗き穴を見た。

…ハッと驚いて、私はすぐに鍵もチェーンも外した。


「どうしたの、秀人兄さん、こんな時間に?」

そう、こんな時間の来訪客は、秀人だった。


「愛海」

「・・・なに?」

見上げた私を、秀人は切なげな表情で見下ろした。

そのせいか、私は固まってしまった。