『んっ。』
眩しい。目が眩むほど。
今は夕方?
あれ?私が先生に呼ばれたのが朝だから……
『もう夕方!?』
『ぶっ!起きて第一声がもう夕方!?はないだろ。』
あれ?男の子?まだ居たんだ。
ってか笑ってるし!
『まだ居たんだ?』
『はぁ?お前は知らないだろうが、俺はお前が車に引かれてから家には帰ってねぇよ。』
『は?ってか何ヶ月ここにいんのよ!』
『別にいいだろ?』
『良くない!ってか私明後日には退院するからね!』
『そっか…。俺もやっと家帰れるのかぁ。』
『そんなに帰りたいなら帰ればいいじゃない!』
『はぁ?誰も帰りたいなんて言ってないだろ!』
『いーや、
目がそう訴えてますぅ!』
『あーもぉ!俺は絢と一緒にいたいんだよ!』
『えっ?』
私は予想外の答えに思わず顔が赤くなった。
『あれぇ?絢ちゃん?照れてるのかなぁ?』
『……っ!うるさい!照れてない!』
恥ずかしい。
でもなんかとても嬉しい。
『またまたぁ。照れてるくせに。』
『もぉ!照れてないってばぁ!!』
私は涙目になりながらそう男の子に訴えた!
『わかったよぉ。もう怒らないでくれ?』
『…別に怒ってないし!』
『わかったわかった。』
『あのさ……裕二ってまた呼んでもいいかな?』
気づけば私はとんでもないことを口にしていた。
『……そんなの
いいに決まってるじゃないか!』
『ほん…とに?』
『ああ。その方が俺も嬉しい。』
『裕二。これから思い出せるように努力するね?』
『ああ。でも無理はするな。』
『分かってる!』
『絢。俺考えたんだ。』
『?』
『絢は、俺といない方がいいんじゃないかと思って。』
私は言葉の意味がわからなかった。
えっ?何それ?意味わかんない。
だって今ゆっくりでもいいから思い出そうって考えてたところなのに。
『っ!嘘だよね?』
『いや。本当だ。』
そんなの。無いよ。
『じゃあ俺はこれで。』
『っ!裕二!!』
裕二がどっかに行っちゃう。
『まっ待って!』
裕二は待つどころか走って出て行った。
私は急いでその後を追う。
でも差は開いていく一方でやがて裕二の姿は見えなくなっていく。
裕二は病院の外に出た。
それでも裕二の行った方向へと走った。
やがて、点滴を引き抜いたせいか意識が朦朧としてきて走る足もふらふらになって、それでも前へ前へと踏み出す。
私はその場に崩れ落ちるようにして倒れた。
だんだんと意識を奪われる。
でも諦めたくなくて必死で意識を保つ。
そして必死に起き上がろうとする。
そして私は起き上がりまた走った。
だんだんと視界がぼやけるでも裕二の事だけを考えて走った。
しかし私は横断歩道で倒れてしまった。
意識が遠くなって行く中でつんざくようなクラクションが聞こえた。
でも誰かに抱きかかえられた気がした。
私は薄く目を開けた。
わたしを抱きかかえた人は……
裕二だった。
裕二は今にも泣きそうな目で私の名前を呼んでいた。
私の目からは涙が流れた。
裕二はそれに気づいて私をジッと見つめた。
私はゆっくりゆっくり目を閉じた。

