またあの夢をみた。

白い白い思い出の世界。

でもいつもとちょっと違う。

ちょっとほんのちょっとだけ
黒い黒い記憶があった。

私はゆっくりゆっくりそこへ向かった。

その記憶は私が失っていた記憶だった。

でも遠くにあるみたいに霞んで見えなかった。

私の体はだんだんと思い出の黒い黒い部分へと引き寄せられるように立っていられなくなった。

私はすぐそこにヘナヘナと力無く座り込んだ。

ゆっくりゆっくり私は倒れていった。

だんだんと意識が遠くなる。

『ゆ…じ。』

あの黒い記憶から私の声と思われる声が聞こえた。


ー 私があの男の子を読んでる声? ー


私はそこで完全に意識を失った。



私はどうなったの?

助かった?死んだ?

私は誰を裏切った?

私は誰に裏切られた?

頭に鋭い痛みが走った。

『いやあぁぁぁぁ!!!』

ー 思い出したくない。 ー

その思いが体を支配する。

『……や………あ……絢ッッ!』

私はうっすら目を開けた。

でも涙で視界が歪んで誰が私の名前を呼んでるのか分からなかった。

『……だ…れ?』

私は絞り出したような声で聞いた。

すると…

『裕二。』

『あの…男の…子。』

『絢。どうした?』

『なんでも…ない。』

『絢ッ!言ってくれ!』

男の子がこっちに手を伸ばしてきた。

『いやっ!』

私は知らない間に男の子の手を弾いていた。