あれから10分以上たった。

男の子は全然戻ってこない。

まるで私だけしかこの世にいないようなそんな感覚さえした。

痛いほどの静寂の中私は必死に思い出そうとしていた。

ぼぉっとしていた日々。

交差点をゆっくりゆっくり進んでいた。

左から車が来ていて何度もクラクションを鳴らしていた。

その直後、視界は反転し硬いコンクリートの感触。

鈍い痛みが全身を駆け巡り、真っ赤な血が私の周りに広がっていく。

そのあと私に駆け寄ってくる影。

その直後私は意識を手放した。



それだけのはずなのに…

何かが抜け落ちている。

何か大切なことを忘れてしまってる。



ーーアノ、オトコノコハイッタイダレナノーー

私は必死に思い出そうとした。

その度に頭に割れるような激痛を伴う。


痛い。


私はゆっくりゆっくり倒れていった。

バンッッ!

扉が激しく開けられた。

肩がビクッとなる。

『絢ッッ!』

『か…れん。』

『絢ぁ。心配したよぉ。いきなり車に引かれたって裕二に言われて。』

『裕二って….…..


誰?』

『絢!?裕二は絢の彼氏じゃん!』

『私に彼氏なんかいたっけ?』

『いたじゃん!ラブラブだったじゃん!』

『裕二って人どこにいるの。』

『俺だよ。』

えっ……さっきの男の子……?