あれからもう直ぐ10ヶ月になる。

絢が俺の中でどれほど大きな存在だったか今になって分かった。

よく、当たり前のものを無くしてその大切さを知ると言う言葉はその通りだと思った。

絢の傷は体だけじゃなかったんだろう。と俺はどれだけ自分自身を責めただろう。

時々思い出すのは…絢の眩しい笑顔だった。

どれだけ幸せでどれだけ暖かかったか。

俺は忘れてたんだ。

加恋に言われて目が覚めた。

加恋が話しかけても絢は無視と言うかぼぉっとしていて、まるで感情のない人形のようだと言った。

俺は絢がいつも行くところに走った。

でも絢はいなかった。

俺は街を走り回った。

そして絢を見つけたと思ったら絢は赤信号なのを見てなくてフラフラと車の前に出て行きバンッッって言う痛々しい音と共に遠くに吹き飛ばされそこに力なく倒れた。

俺は一瞬息をするのも忘れた。

目の前で起こったことに目を背けたかった。

でも絢からは血が生々しく流れ出していた。

俺は駆け寄り声をかけた。

絢は一瞬だけ目を開けたが直ぐに動かなくなった。

俺は救急車を呼んだ。

俺はずっと絢を抱きしめていた。

絢は暖かかった。

俺は願った。

絢は……絢だけはまだ連れて行かないでくれ。

と…。