私は無性に泣きたくなった。
すると椋本さんが
『好きなだけお泣きください。
泣くのを堪えるともっと辛くなりますゆえ。』
本当に泣いていいのかな?
でももう限界…。
『うっ…ひっ…』
私はしばらく声を押し殺して泣いた。
椋本さんは何も言わずそばにいてくれた。
『椋本さんや花園さんはなんでそんなに優しくしてくれるんですか?』
『碧でいいですよ。それはですね…。
きっと花園様の想い人にあなた様が似ているからじゃないですか?』
『想い人…。あのその人の名前は?』
『確か 愛 だった気がします。』
『愛…』
昔お母さんに聞いたことがある。
絢、貴方には双子の姉の 愛ちゃん がいるのよ。
訳あって別々に暮らしているけどちゃんとした家族なのよ…。
と。
『あの、碧さん。その 愛さん って言う方と私の顔は似ていますか?』
『ええ。とてもそっくりです。顔も背丈も性格も瓜二つです。』
『あの、もしかしたら、私の双子の姉かもしれません。』
『えっ?あなた様に双子の姉様がいらっしゃったのですか。』
『ええ。お母さんが昔言ってました。』
『その方とは最近あったことはありますか?』
『いえ、私が物心ついた時にはもういませんでした。』
『そうですか…、実はこちらの 愛さん も行方不明なんです。』
『そうですか…』
『はい。』
『あのっ。ごめんなさい!こんな話。』
『いえ、いいのです。』
『あのっ。ずっとあなた様じゃあれなので絢って呼んで下さい。』
『分かりました。でも流石に絢とは呼べないので絢様でよろしいでしょうか?』
『あっ…そうですよね?すみません。』
『いえいえ。』
『裕二、今何してるかな…』
『彼氏様の名前は裕二様と言うのですね。』
『はい。』
『さみしいでしょう。きっと裕二様も心配しておられると思います。』
『……』
私はそっと窓に近づき、窓に手を当てて静かに裕二…と呟いた。

