『絢。その首の痣は?』
『えっと……そのっ……』
私ははっきり答えることが出来なかった。
『誰だ。俺の大切な絢に痣をつけたのは…。』
敦兄の声が一気に低くなった。
その声にみんなが怯えている。
『誰だと聞いているんだ!!』
『…っ!…俺だよ!!!』
悠斗くんは半分やけくそに答えた。
『そうか…。』
敦兄はにやりと笑いながら悠斗くんのところにゆっくりと歩いて行く。
『お前か…。俺の大切な絢に痣をつけたのは。』
『そうだよ!?だからなんなんだよ!?』
『……』
敦兄は無言で悠斗くんの首を持ち、上にあげた。
悠斗くんは苦しそうに顔を歪める。
堪らなくなった私は敦兄に駆け寄ろうとした。
だけどそれは出来なかった。
裕二が私の腕を掴んだ。
私は裕二の顔を見て『離してっっ。』と言った。
でも裕二は、離すどころか余計に掴んだ手に力を入れ、首を左右に振った。
私は泣きながら敦兄に『やめて!!その人は悪くないから!!』と叫んだ。
でも敦兄はまるで私の声が聞こえていないかのようにどんどんと悠斗くんを上に上にと持ち上げて行く。
『やめてよぉ…。もうやめてよぉ…。その人は何にもわるくないんだよぉ…。』
私はその場に座り込んだ。
その瞬間腕を掴んでいた手の力が弱まった。
私は裕二の手を振り払い敦兄が悠斗くんを掴んでいる腕に縋り付いた。
『やめてよぉ!私は大丈夫だ…』
バンッッッ。
私は何が起きたか分からなかった。
ただ強烈な痛みが背中に走った。
『っ。いっ…た。』
私は敦兄に突き飛ばされていた。
加恋が駆け寄ってきた。
裕二はすかさず敦兄を抑え込む。
『もうやめてぇぇ!!』
私がそう叫んだ瞬間敦兄はハッっと我に返った。
そして裕二が説明している。
でもだんだんその声が遠くなり、目の前が真っ暗になっていった。
最後に聞いたのは敦兄が私に何か話しかけた声だった。

