わがまま即興曲。

「あの子はたしかに優しい子です。
本人は全く気づいていませんが。」

僕の話を聞いて、
進本さんは静かに口を開く。

「だけど…」

だけど?



「強い。というのはどうでしょう?」



え?


「私は、あの子が強いとは思えません。」

「どうして、ですか?」

病気をものともしないで、
明るくふるまう彩音さんは僕から見たら、
充分に強いと思うけど…

「あなた、さっき、あの子に叩かれたでしょう?」

ああ。
あの時、診察室の隣にいて、
処置を手伝ってくれたのは進本さんだった。

「お恥ずかしながら…」

「なんで叩かれたのか、わかります?」

「…すみません。わかりません。
僕、頭悪いんで…」

「はあ…頭悪いで全てを片付ける思考停止人間に話すことはありません。」

「ええ!?ちょっとまってください!
すみません!ちゃんと考えます!」