「もうこの辺で大丈夫です。
ありがとうございました。」

家の近くまで来たから、
日も落ちたし、
さすがにこれ以上は悪いと思って、そう言う。

「本当に大丈夫ですか?」

「あのねえ先生。
私はいつも学校からひとりで家に帰ってるの!
もう高校生なの!
大丈夫じゃないわけないでしょ?」

「…それも、そうでしたね。
お年寄りか小児科の患者さんの担当ばっかりだったのでついうっかり… 」

「なんだそれ?
私がおばあちゃんか幼女に見えたと!?」

「ええ!?そういうわけでは…」

ちょっと焦ってる先生。
本当にからかうの面白いな。

「うそうそ。
暗くなってきたし、私、元気なかったし、
心配してくれたんでしょ?
先生と色々話せて良かった。元気出た。」

「彩音さん…」

「ありがとうございました。」

不思議と先生と話すと心が軽くなる。

最初は真面目君で、面白くなさそうと、
いい印象なかったけど、今は違う。

話せば話すほど
悪いやつじゃないんだなあ…と、思わせられる。

良い人なんだな。この人が主治医で良かったかもしれない。


とそう思っていた。






…この時は、


それ以上の感情が芽生えはじめてるなんて、


思っても見なかった。