わがまま即興曲。

「それでね、追いかけると相澤さんが雪乃のノートをゴミ箱に捨ててたんだけど、
雪乃は優しい奴だから…もういいって言ってて。
って彩音?聞いてる?」

「聞いてる。」

水曜日、何故かたきのりが料理部の仮入に行くというから、
私もくっついてきた。

たきのりが合唱部に入らないのなら、
私とたきのり、そして雪乃を繋ぎ止めて置くものはなくなってしまう。
それが、悲しかったから…

雪乃が入ってる陸上部には私は入ることができないし…
生徒会なんていう責任のある仕事も、
いつ休むかわからない私には入れないものだった。

それに比べて料理部なら、
大丈夫かなーとも思ったのである。


「でも、なーんか、
納得いかないんだよね。」


仮入で抹茶のギモーヴを作りながら、
私はたきのりから雪乃の話を聞く。

どうやら雪乃は本格的にいじめられそうになっているらしい。
話をまとめるとこういうことだ。

日本史の授業の時、谷中先生が雪乃のテニスを褒めた。
そしたら、雪乃とたきのりのクラスにいる
谷中先生大好きっ子の相澤さんという子が、
雪乃に近寄り、ノートを借り、借りたノートをそのまま雪乃の知らないところでゴミ箱に捨ててしまったらしい。