「まだ帰ってないわよ。」

やっぱり。

私の父は銀行員。
いつも仕事が忙しくて、
帰りは大体、真夜中になる。

「パパも帰ってこないし…
あやちゃんの心配をするのはいつも私だけ。」

………………。

父よ。
家族のために働いてくれているのはわかるけど、
旦那ならたまには妻に構ってやってくれ。
あなたがいないと、私がひたすら束縛されるのだ。

「でもね、あやちゃん。
帰りが遅くなるなら、ちゃんと連絡くれなきゃダメじゃない!」

…本当は、こんなに遅くなるつもりなかったけど、
病院で木登りして発作を起こして、休んでたなんて言ったら、
心配して何を言い出すかわからない。
入院なんてことにならなくて、本当に良かった。

これでもちょっ早で帰ってきたんだけどな…

時計を見る………。

はあ……

「遅い遅いって、まだ7時過ぎでしょ?
高校生ならこのくらい普通だって!」

そのくらいの自由、許してくれてもいいんじゃない?

「そうかもしれないけど!」

母は反論する。

そして、私が一番聞きたくない一言を言ってしまった。

「あやちゃんは、普通の高校生じゃないのよ!?」