つっこみきれねえと思って、助けを求めるようにたきのり見ると
ものすごく集中して生物の教科書を読んでいた。

めずらしいな、こいつがこんな危機感を感じて勉強するなんて。
さっきまで中間テストの存在を忘れてたっぽいし、何かあったのかな?

…まあ、私も忘れてたけどね。

忘れてた私に少し余裕があるのは、夏休みに入院した時に暇すぎて二学期の予習をしてたから。

こう見えて私、そういうとこは案外真面目なのだ。


「へもぐろびん…ヘモグロビン…」


たきのりがぶつぶつ言う。


《そのヘモグロビンが少なくなって貧血が起こると、心臓にとても悪いんですよ。
だから、鉄分が多めの食事を心がけてくださいね》


ああ…入院中にその辺の勉強してた時、たまたま回診に来たあいつにそんなこと言われたなあ…






は!?

また…思い出してしまった。


…忘れなきゃいけないのに。

なんで…


どうしても頭から離れてくれない。


好き。

好きって想いが、行き場がなくて騒いでる。


忘れたい…のに。