わがまま即興曲。

「持って帰ることもできると思うけど?」

私はとった一匹の金魚を見る。
他の金魚に比べて、元気がない。

私がとれるくらいなんだから、
動きの鈍い金魚だったんだろう。
弱っているのかもしれない。

でも、
小さい器の中を必死に泳いでいて、
外に出ようと頑張っている。


…私に似てるな。


そう思った。


「いい。いらない。」

「せっかくとったのに?」

「うん。
だって、私が持って帰ったら、
この金魚の残りの人生は、うちの水槽の中だけで過ごすことになるでしょ。
そんなの、可哀想だから。」

「彩音さん…」

「たくさん、色んな世界を見ろよ。
バイバイ!」

そう言って、
私は金魚を屋台のプールに放す。

再び広いプールで泳ぎ始めた金魚は、
不思議とさっきより元気になってる気がした。


「さて、次はどこいく?」

先生がそう聞く。