「彩音ちゃん、最近調子良さそうね。
恋でもした?」

「私の体で恋なんて、
できるわけないじゃないですか。」


今日は月に一度の定期検診の日。
主治医の北川先生と話していた。
この病院で私が心許せる数少ない人の一人だ。


「あら…体のことなんて、
恋には関係ないわよ。
彩音ちゃんと同じ病気の人でも、恋して、結婚して、幸せに暮らしてる人、沢山いるんだから。」

「そうかも知れないですけど…
私には無理です。
大体、私、小学校から女子校だし。
出会い無いし…」

「出会いなんてどこに転がっているか、
わからないものよ?」

…そのどこって場所に、そもそも学校以外に自由のない私には行けるわけがない。

「私のことより、先生はどうなんですか?
独身ですよね?
そろそろ結婚しないんですか?」

話題をそらすために、お節介なことを聞いてみる。

「そのことなんだけど…
実は彩音ちゃんに大事なお話があります。」

え?

「まさか…結婚するの!?」

もう独身を貫くんだと思ってた。

「ふふ…そうなの。」

びっくりだ。

「おめでとうございます。」

北川先生なら心から祝福できる!
って思ってたんだけど…