「そういえば、昨日、あの後どうした?」

夕飯を一緒に食べていると、
守が突然聞いてきた。

「ああ。無事に見つけたよ。
本当にありがとう。」

「いえいえ。
こっちもあんなに焦ってる兄貴を見れて、
なんか新鮮だった。」

「………」

昨日のことを冷静に思い出してしまう。

「兄貴?どしたの?黙って。」


「なんで、あんなに焦ったのか、
自分でもよくわからないんだ。」


「………」

「そりゃ、患者が脱走すれば、普通に焦るよ?
今までだってそういうこともあったし。
でも、普通に落ち着いて、看護師たちと相談して探したりしてた。
だけど、今回は何も考えられなくなって、
気がついたら一人で探し回ってたんだ…」

「…それは、兄貴にとって、
中野がただの患者ではなくなりつつあるってことなんじゃない?」

「え?どういう意味?」

何言ってるの?この弟は。

僕が全然わからないでいると、
守はとんでもないことを言い出す。





「兄貴は中野のことが好きなんじゃない?」