わがまま即興曲。

彩音さんがお茶をしているらしい喫茶店は、
病院から近かった。

これなら、午後の回診がはじまる前に連れ戻して来られそう。
そう思って急いで車を出す。

…彩音さん、無事でいるよね。

携帯に何も連絡がないということは大丈夫なんだろうけど、
心配で気が気ではない。

どのくらい焦ってるかというと、
車のサイドブレーキを解除し忘れて、
発車しようとしてしまったくらいだ。

…ちょっと落ち着こう。
と思っても中々落ち着けない。

《本当に兄貴、らしくねーな。》

守の言葉を思い出す。

確かに、らしくないな。

今までだって患者の脱走はあったのに…
その時も焦ったけど、
今が一番焦ってる。

どうしてだろう…

患者さんが心配なのは一緒のはずなのに…

どうしてだかわからないけど…



彩音さんのことは、特に心配なんだ。