わがまま即興曲。

「あーもう!うるさいなあ。
今日は珍しくママが来ないから、
静かにひとりでピアノが弾けると思ってたのにさ!
回診なんてしなくても、私はもう元気で
、すっ…!ッケホケホ…」

やっば…一気にまくしたてたから、
咳出てきた。
説得力のかけらもないよね…これ。
失敗した。

「ほら、もう!とにかく、病室に戻りますよ。」

「ケホッ…ッやだ。」

「子供みたいなこと言わないでください。
進本さんに聞きましたけど、
彩音さん、もう二時間以上もここにいるそうじゃないですか!
それだけ弾けば充分でしょう?」

「ゼェ…ハァ…全然、充分じゃないっ!
先生、私が今、弾いてたの誰の曲だかわかる?」

「え……?
聞いたことある曲ではありますけど…
、誰の曲かは…」

「ショパンだよ?私の一番好きな作曲家。
ショパンはね、病気にかかりながらも、
最期まで曲を作り続けたんだって。
憧れるなあ…」

「彩音さん…」

「だから、私も、体のことは忘れて、
満足できるまで弾きたかったの!」