その後、俺と彼女は仲良くなり、たくさんの話をした。

ある時、彼女が俺の目をおおって「これが私の世界~」と言ったことがあった。

彼女は楽しそうにケタケタと笑っていたが、俺はなにも言い返せなかった。

喉の奥をぐっと締め付けられた感じがした。

その日の夜。

俺は自分の目を隠し、部屋を歩いてみた。

しかし、自分の部屋から出ることすらできなくて。

これが彼女の生きている世界。

俺は怖くなった。

彼女を支える自信がない自分が嫌いだった。

まだまだ弱かったあの頃の俺には勇気もなかった。

結局彼女に想いを伝えることもできずに卒業式がきた。

卒業証書を片手に俺は彼女を見た。

声をかける勇気もないくせに、まだ彼女が好きだった。

それでもせめてと、すれ違いざまに未練がましく会釈をした。

これで終わりにする予定だった。

気づかれずに終わると思っていた。

なのに彼女は気づいてくれた。

わずかな空気の動きを読みとって。

微笑んで会釈を返してくれた。

俺の視界が滲んで見えなくなったのを今でも良く覚えている。