俺は告白を断った。

彼女は涙目だったが笑った。

まるで答を知っていたようだった。

「林くん佐藤さんが好きなんだもんね」

俺は彼女の意外な発言に目を見開いた。

俺が佐藤を好き。

やっと理解できた。

俺は再び彼女に謝った。

そして佐藤の隣の席に座る。

何気なく佐藤に声をかける。

「なぁ、佐藤。お前の得意教科って何?」

「…え?数学だけどいきなり何?」

佐藤はいつものきょとんとした顔をこちらに向ける。

「じゃあお前の下の名前は?」

彼女は意味が理解できず、頭をかしげる。

「夢だけど…?」

「じゃあ、林+夢=何?」

「??」

夢は目を回しそうなほどに混乱している。

「ごめん。回りくどいな夢が好きだ」

夢はまだいや、もっと早く目を回した。

頭を抱え俺から目をそらす。

だけど彼女の耳だけは素直だった。

赤く染まったそれは、言葉を理解した印だろう。

「答えは?」

俺の言葉に夢が少し体を沈め、小さく唸るように答えた。

「=恋人?」

「正解」

俺は初めて彼女の手に触れた。

柔らかくて指先が少し冷たい真っ白な手。

それが俺の守りたいものだと、彼女が教えてくれた。