百物語

普通なら即OKすべきなんだと思う。

だけど俺は少し時間をくれとだけ答えた。

俺は佐藤に会いたくなった。

いつも困ったときに助けてくれる声が聞きたかった。

礼を言うと照れて顔が赤くなるのが見たかった。

あの苦しくも気持ちいい胸を締め付けられる感覚が恋しかった。

俺は次の日が来ると自分の席で彼女を待った。

教室の扉を開けて入ってくる彼女は、淡い笑顔を残して席につく。

いつものように窓の外を柔らかな眼差しで見つめていた。

俺は意を決して言葉を吐き出した。

「佐藤…。あのさ。ちょっと聞いてほしいんだけど…」

なに?と言いたげな優しい笑顔で彼女がこちらを見る。

「俺、昨日告白されてさ。相手は俺が片想いしてた相手なんだけど…」

彼女はきょとんとしてる。

俺の話の意図が理解できないと言う風だ。

「OKすればいいんじゃない?」

俺の心臓がズキンと痛んだ。

いつもの気持ちの良いものではなく、ただ苦しいだけの痛みだ。

その答えがほしかったんじゃない。

俺の全細胞がそう訴えてた。

「やっぱそうだよな…。サンキュ佐藤」

「…?。うん。」