菜波side


昨日気づいたら保健室にいて、新城先生に家まで送ってもらった。

記憶ないけど…
確か熱で倒れて、その後は……思い出せないや。

頭がボーッとしつつも、お兄ちゃんにいつものように挨拶をして家を出る。
最近イジメの頻度が減った気がする。
少しだけ通学路を軽い気持ちで歩けた。


「今日も綺麗だなぁ海…」


キラキラ輝く海を眺めながらゆっくり歩く。
その時、


「なっなみー!」


遠くから私を呼ぶ声がした。
目線をそっちへ向けると、そこには泰斗が元気よく手を振って立っていた。


「た、泰斗!?」

「迎えに来たよ、オジョーさん」


ちょっとキザなことを言って私の手をスっと取る泰斗。


「ふふっ!
泰斗なにそれ?」

「やっぱ俺には無理だなー!紳士っぽいのは!」


いつもの調子に戻る泰斗。

泰斗の笑顔に私助けられてるよ…

そう思いながら泰斗を見ていたら、雰囲気が明らかに違うことに気づいた。


「たっ、泰斗…!」

「んー?」


私を見る表情は変わってない。
だけど明らかに他のところが変わってる。


「か、髪…!」

「やっと気づいた?
結構はりきって変えたんだぞー!」


すごい…!
カッコイイ…!

泰斗は金髪に少し長い髪でセットした髪型だったけど、今は黒髪に短髪で前髪も上げていて…全然雰囲気が違う。


「い、いきなりどうしたの!?」

「あれ、似合ってない?」

「そんなことない!
すっごくカッコイイ!」


正直、私がすごく好きなタイプの見た目だった。


「おっしゃ!
聞き込みして回った甲斐があったぜ!」

「聞き込み?」

「おう!昨日女子に1人1人どんな見た目の男がタイプかって聞いて回ってたんだよ!」


ほうほう…
ってなんでそんなことしてるの!?


「いろんなの聞いたけど、俺に似合うのってこれかなーって思って髪色から髪型から変えてきた!
服装とかアクセは変わんねーけどな!」


いつものようにニカッと笑う泰斗。
不意にドキッとしてしまった。

や、やだ…!
私センセイが好きなのに…!

ダメだってわかってるけど、ついつい泰斗を見てしまう私。


「さっきから俺のこといっぱい見てどーしたんだ?」

「っ!//」


私の視線に気づいたのか、少し照れながら泰斗にそう言われた。

き、気づかれてた!?
恥ずかしい…!//


「顔赤くしちゃって、わかりやすいなーお前!」


私のほっぺをつつく泰斗。


「や、やめて泰斗!」


自然と笑顔になる。
泰斗に触れられたり、こんな風にじゃれあってみたりするのは悪くないなと思えた。

こんなに友達っていいものなんだ…
もっと早くに泰斗と出会いたかったかな…


「もしかしてさー菜波」

「ん?」

「俺に惚れた?」

「へ!?//」


唐突に変なことを言う泰斗。
ビックリして身体が固まってしまった。


「冗談だっての!
ま、俺は菜波が彼女なら大歓迎だけどなー!」

「な、なに言ってるの泰斗!」


ほんとバカ!//

照れながら2人で校門を通り過ぎた時、いきなり誰かに腕を掴まれた。
ビックリしながら振り返ると、そこにはセンセイがいた。


「センセイ!?」

「おっ、神ちゃんじゃん!
おっはー!」

「旗手…ちょっと来い」

「え!?」


泰斗の挨拶も無視して、グイグイ引っ張ってどんどん前へ進んで行くセンセイ。
どこか様子がおかしい。
いつもは意地悪言いながらもこんなに乱暴なことはされたことがなかった。
だから少し心配になる。


「菜波!神ちゃん!」


遠くから泰斗の声が聞こえる。
返事をしようとしても、センセイに強引に引っ張られてそれどころじゃなかった。


「センセイ!放してください!」


私がそう言っても、センセイは振り向いてもくれない。
むしろさっきより腕を掴んでいる手の力が増した。

痛いっ…!

そう思いながら、黙ってセンセイの後をついていった。