月日はあっという間に過ぎて、芸能界に入って6年、小学4年のときだった。
芸能界にも慣れて、ちょっとゆとりが出来たときだった。
「お母さん、大丈夫?」
「ん……、大丈夫……」
母親の体調が悪くなって、横になることが多くなった。
この頃、映画で準主役に選ばれてバタバタしていた。
学校に行けなかったり、早退遅刻が多くなった。
「じゃあ、お母さん行ってくる。」
「いってらっしゃい。周りの人に感謝するのよ。」
“周りの人に感謝する”
芸能界に入ってから、口が酸っぱくなるほど言われた。
最初はよくわからなかったけど、今はわかる。
ドラマや映画の撮影で、たまに態度の悪い人を見ると、嫌な気持ちになる。
それは、共演者だけでなく、スタッフさんもそうだ。
“スタッフさんが頑張っているから、遥希はこうやってテレビに出られるのよ。”
これも母親が教えてくれた。


