記憶喪失という壁で自分で道を塞いでいることも分かっていた。



そう、あなたの言うとおり。



あたしは逃げ続けていた……



でもね……?




「怖いの……」



「え?」



「いざ向き合うってなったら、怖いの……」




向き合ったら、今までのものが失っちゃうんじゃないかって……



また責められるんじゃないかって……



前を向いて向き合うのが怖いの……




「じゃあ、そんな奈緒に一ついいことを教える。」



「いいこと……?」



「前を向けば、景色が変わる
向き合えば、周りの人が変わる


だから、諦めるな。」




ーードックンッ




この言葉……




『前を向けば、景色が変わる
向き合えば、周りの人が変わる


だから、諦めないで……』




あたしが言った言葉……?



必死に思い出そうとするも、頭が割れるくらい痛く、心臓が壊れそうなくらい動いている。



だんだん立つ力もなくなってきた。




「奈緒?」




あ、あたし……




ーードサッ