バタバタバタバタッ

「クッソー、小野っち話長げぇんだよ!!」

「あー!  早く行かねぇと筋トレ始まっちまう!!」

「やばい!! 杏奈に怒られるーーー!」

全力ダッシュで体育館へと続く廊下を走るあたし達。

「コラー!!渋谷、小柳、中原、廊下を走るなー!」

「「「そんなこと言ってる場合じゃないんだよ先生!!」」」


バン!!

「ハァ…ハァ…間に合った!……」

「あーもうムリ、イヤ走りたくない、動きたくない。」

「きっちぃー!!」

キィ

体育館の扉が開く音がしてそこに現れたのは、まぎれもなくあたし達をここまでダッシュさせた張本人。

「おー、なんだ お前ら そんなに息切れして。」

「せ…先生の話が長いからだよ…」

あたし達2年2組の担任、そしてバスケ部の顧問  小野 政行(おの まさゆき)。通称小野っち。

「せんせぇー!!ちょっと来てー。」

向こうで先生を呼ぶ声がする。

「なんだ?どうした、空?」

声のする方に先生は歩いて行く。

「クソ…誰のせいでこんなに走ったと…」

「お疲れ様三人とも。」

一人の女の子が倒れこんだあたし達の前にしゃがみこむ。

「杏奈ぁ~」

このセミロングの目のクリクリした女の子は  雪宮 杏奈(ゆきみや あんな)。
あたしと同じバスケ部マネージャー。  優しい女の子。

「あら夏南、重かったなぁ…一人でお茶運ぶの。」

「う…」

「重かったなぁ~」

「後で奢らさせていただきます…」

「よろしい。」

優しい…ハズ。

「それより、優助、賢太君 急がなくてもいいの?」

「「へ?」」

すると杏奈の後ろから二つの影が、こちらに向かって歩いてくる。