安心しているところに春香さんから
「結衣、残念なことにまだ問題がひとつ残ってるんだよね」
驚いて顔を見ると
「あんた、タクシーに乗らないでどうした。」
乗らないことの説教が始まるのかと思い
「ごめんなさい。大通りで乗ろうと思って歩いてた」
「それでどうしたか考えて」
溜息まじりな声に
「隼と言いあいした」
うつむきながら答えた。
反省してた。
ものすごく反省してた。
完全な八つ当たりだったから
ものすごく反省してた。
「隼もバカだからただの男になっちゃったんだよね。約束忘れて結衣のこと車に乗せたんでしょ」
「あぁ」
「人通りあるとこで、やったんだよね?」
「う…うん。でもさ、連れ去られたと思ったかもよ?」
失礼すぎる言い訳を言ってみたけど
「無理だ。抱きしめた」
「は?」
「抱いて車に乗せた」
「は?」
隼が言ってしまったから終わった…と思った。
「隼…それまじ?なんでよ。無愛想男はいつも通り無愛想で通せよ」
春香さんがまたすさまじい勢いで怒りだし
「いや…私が悪い…八つ当たりしたしタクシー乗らなかったし」説明したけど
「結衣が悪いのは当たり前」と言われ
「しょうがねーだろ。気づいたらやってたんだよ」っていう言葉に
バチンと隼の頭を叩いてた。
「痛てーな」隼は不機嫌な声を出してたけど
「どうすんのよ」春香さんはもっと声が大きくなった。
春香さんは若頭2人よりずっと権力があるみたいだ。
