「ねぇ…隼と初めて会ったときネクタイしてたし極道に見えなかったよ?それに着物じゃないし…」
酒屋の前で出会ったときにこの人が極道なんて微塵も感じなかった。
「極道だってネクタイするよ。…っていうかヤクザが着物ってフッ…何でそう思うんだ」
隼が鼻で笑った。
「へ?DVDだと和服だった…いや…スーツもあったか…」
「何のDVD見てんだよ」
「あ…いいのいいの忘れて」
やっぱり昔、父や祖母と見たヤクザ映画とは違う世界のようだ。
私にはまったく想像出来ない。
「司だって全然極道に見えないよね?王子様みたいな顔だよね?」
「結衣ちゃん嬉しいこと言ってくれるねー」って司は、破顔した。
「だっていつもは怖くなかったよ。さっきはちょっとみんな怖かったけどいつもは怖くなかったよ」
何だかどう考えても信じられないし、ヤクザの組の名前なんてまったく知らない私には、嘘のようにしか思えない。
映画の中のヤクザは見るからにヤクザで、隼も司もまったく違い過ぎる。
そもそも自分のまわりに極道がいるなんて事が考えられないのだ。
