【完】甘い香りに誘われて*極道若頭×大人の♀



通りを渡ろうとしたその時、


「結衣、お前何やってんだよ」



歩き始めた私の手が後ろから掴まれた。


振り返らなくてもその手が誰の手だがわかる。



でも、もうさんざんな思いをしてバリトンボイスでさえ恨めしい。



力強く手を振り切るけど私の力よりも何倍も強い力で振りほどけないのが


さらに悔しくて涙が出る。


悔しい…



「何があった」



「……」



「言え。何があった」



涙が零れるからもっともっと腹正しい。



「言わねー気か」



「……」



無言で振り返り隼の顔を睨みつけるけると



「上等だ」



私の顎を片手でぐっと掴んだ。



「結衣、ここどうした」


隼はそっとぶつけた頬を撫でた。



「痛っ…痛いから触らないで…」



「青くなってんじゃねーかよ」



「嘘。赤でしょ」



「痣になって腫れてんぞ」



「もう…ほんと最悪…もうイヤだぁ」



振りほどこうと両方の手で隼の胸を押しやろうとすると



「この腕はなんだ。誰にやられた」



今度は両腕を掴まれてしまい



強い口調で責めたてるように問い詰める隼が恨めしい。



「誰?…隼と司以外に…誰が私にこんなことするの?」



別に隼や司がやったわけじゃないけれど



何で責められなきゃいけないのかわからなかった。