「吸わないの?」
「結衣が部屋に戻るって言うんだろうが」
「だからここで吸えばいいでしょ。別に平気だから」
「いいんだよ」
不機嫌になるぐらいなら吸って欲しい。
空気清浄機のボタンを押して
「これで何か問題があるの?隼の部屋なんだから気を使わないで」
「チッ」まだ不機嫌。
「じゃあ私もタバコ吸おうか?」
吹き出しながら言うと
「あぁ?」
大好きなはずのバリトンが相当な怒りを帯びていて
あげくに恐ろしいほどの顔でにらまれた。
「冗談だから」
慌てて笑いながら言ったけど不機嫌さはなおらず
「隼?」って呼びかけても
「ん?」が優しい ん?じゃなく
ふざけんじゃねーが凝縮されてる ん?だった。
だから私も黙った。
もう余計に機嫌が悪くなったら困るから黙った。
「何黙ってんだよ」
「隼の機嫌が悪いから」
「悪くねーよ」
「悪いじゃん」
また部屋の中が静まり返った。
「結衣、お前はそこに座ってろ。動いたらただじゃおかねーぞ」
そんな恐ろしい言葉を吐いてテーブルの上のタバコを持つとベランダへと出て行った。
