BRILLIAで出会ったのは夏真っ盛り。
いつもスーツでいたけれど、上着を脱いで腕をまくっている時もあった。
ここに来てからも、隼の身体から刺青を見たことがなかったから余計に今日驚いたわけだ。
「俺はいれてねぇ。二十歳ぐらいの時かな。墨いれるって言ったら親父とお袋に言われた。墨は一生消えねぇんだ一生背負う覚悟が出来たときに考えろってな」
「響さんも刺青があるの?」
「親父もない。お袋がイヤがったらしい」
一生背負うからいれる?冗談でしょ。私だってあんたと一緒に背負うのに墨なんか入れなくなって覚悟きめられる。見た目じゃないんだ。
腹の中の覚悟だと言ったそうだ。
その言葉は由香里さんらしいと思った。
「温泉も入れない。子どもとプールや海にも行けない。極道であっても親父だろって。命はってるのはあんただけじゃないって言葉に親父は負けたって笑ってた」
「すごいわかる。私も隼に入れないで欲しい」
「イヤか?」
「イヤ。響さんと由香里さんからもらった身体だよ。わざわざ傷つけて欲しくないし。それに覚悟って自分がするもので人に覚悟してますって見せて評価してもらうものでもないって私は思う。刺青がその人の価値というか評価になるならそんな評価いらないっていうか、そんなものじゃないよね?」
「龍崎の姐さんは大喜びしたらしいけどな」
「佐和子さんが?」
「あぁ。観音様と龍が伯父貴の背中にはいる。観音様が姐さんだ」
あのダンディーな貴裕さんにも刺青があるというのが私には違和感。
そして佐和子さんの喜ぶ気持ちも私にはよくわからなかった。
いくら観音様が私だと言われても私は観音様じゃない。
だから私なら全然嬉しくないと思う。
