「貴裕さんも迷うんだって」
「あはははは」
「ねぇ」
「ん?」優しい ん?だ。
「あのさ、お酌ってみんなにしてあげないの?」
「プッ…なんでだ?結衣は何でそう思った?」
「お願い笑わないで。私はこっちの世界はわからないの」
真剣な顔で言ったから隼はすぐに
「あぁ悪い。それでどうした?」
「普通はね、近くにいる人にお酌してあげるでしょ。会社の人と飲んだりしても御世話になった人や仲間にはお疲れ様とかありがとうの気持ちをこめてついでまわるのね」
「あぁ」
「みんなお仕事してくれたんでしょ?だからお礼についだ方がいいのかな。って思ったんだけど」
「結衣の感謝の気持ちか」
「うん。みんな家族だって由香里さんが言ってた。家族なら仕事から帰ってきたら一緒に座ってついであげるでしょ?私は家族じゃなくて居候だけど人一倍お世話になってるからさ…」
「あぁそうだな」隼は笑いながら私の頭を撫で
「おい、結衣が今日もお疲れ様ってお酌をして回りたいそうだ。仕事が終わったやつは、良かったらグラス出してやってくれ」
「運転する人はダメですよ」
「いい?」
もう一度隼に聞くと
「あぁ行ってこい」
優しい笑顔で答えてくれた。
