隼は私の頭の上で大きなため息をつき


「結衣、視線感じて不安だったんだろ?何で電話の時に言わない。いつも何もない。大丈夫って言ってたよな」


「うん。最初は気のせいだと思ってたの。コンコン…でも今日は気のせいなんかじゃないなと思ってハァハァ…相談しようと思ってた。コンコンコンッ…ハァ…」


そっと背中を叩きながら


「ちょっと遅かったな」私の顔を覗きこむ隼。


「うん」


「だから危ない目にあったのわかるな」


「うん」


「悪かった」


そう言って本当に悲しそうな顔をするから


「でも助かったから。ハァハァ…大丈夫」って笑うと


「笑いごとじゃねーぞ」と睨まれた。





「結衣、もうお前の家には帰さないぞ。わかるな。結衣も怖いだろ?」


私は大きく何度も頷いた。



「あんたの部屋より家の方が安全でしょ。結衣ちゃん1人になることもないし。」


「あぁ。そのつもりだ。」



待って…落ち着くまでホテルか何かにいて引っ越し先を探すのを手伝ってくれるのかと思っていたから慌てた。




断ろうと口を動かそうとすると




「結衣、拒否権なんてねーよ」




バリトンボイスで凄まれた。




「させないわよ」



由香里さんの声まで後に続いた。



どう考えても勝ち目はない。


戦う気力も今はない。


だから「暫くお世話になります」と頭をさげた。