落ち着いてきた私に
「そうか、違うか首をふってね」由香里さんが言い
「うんなら頷いて。ちがうなら横にふって」
私は、ひとつ頷いた。
「どこか他に痛いとこある?」
「ううん」横にふる。
「見たことのある男?」
「ううん」また横に。
「何か覚えてる?」
私は思い出そうとするとまた身体が震えたけれど
隼に包まれているから守ってもらえると思えて
目を閉じて考えた。
手で電話を耳にあてる真似をした。
「あぁ。電話あったな。ロックかかって誰と話してたかやつらの意識が戻るまでわかんねーな」
黒埼さんのまた恐ろしい言葉が聞こえたけれど、私だって意識がなくなったんだからそれはありだと思う。
「何か聞こえた?」
「うん」今度は小さく頷いた。
「男?」
「ううん」
「女?」
「うん」
「何言ってたかわかる?」
「ううん」
