バタバタと足音が聞こえ
「結衣ちゃん!」
由香里さんの声が聞こえた。
涙が浮かんできたけれど
あまりに心配そうな顔で大粒の涙を零しているから
すみませんと言おうと思うが声が出ない。
「結衣ちゃん、良かった…ほんとに良かった…怖い思いさせてごめんね」
由香里さんが泣きながら何度も謝る。
「ごめんね。ごめんね」
本当に悲しそうに謝るから
大丈夫って声にならないけど口を動かした。
口を動かすとやっぱりまた咳が出て息が苦しい。
私はまた目を閉じた。
「結衣さんが壁を蹴って知らせてたんですかね。何の音だろうと外へ出たからわかったんですよ。結衣さん頑張りましたよ」
聞こえてくる会話に
あぁ…やっぱり気づいてくれたんだ。黒埼さんありがとう。
握ってくれている手に少し力をいれたら
「あの野郎、殺しても殺したりねー」なんて言葉が聞こえ
もう一度力をいれたら
「あぁごめんごめん」
黒埼さんはわかってくれたみたいだ。
