「結衣さん、結衣さん。しっかりしてください」
遠くで誰かが呼んでいる。
「結衣さん」頬を軽く叩かれて意識が戻る中
そっと目をあけると天井のシャンデリアが見えた。
「ぁ…ゴホッゴホッ…ハァハァハァ」
話そうとするが声が出ない。
「わかりますか?もう大丈夫ですよ」
その声が黒埼さんだとわかった。
助かったんだ…
そう思うと安心したけれどまだ頭も心も現状についていかない。
喉が苦しくてうまく空気も入っていかない。
「今、社長が来ますからね。すぐには声が出ないと思いますが、大丈夫ですよ。心配しないでくださいね。悪いやつらも片付けましたからね」
わたしはうんと頷いたけれど怖さでまた身体が震えだし
黒埼さんがそっと手を握ってくれた。
「手の消毒しますからね。痛いけど我慢してくださいね」
言われても、痛みの感覚がもうよくわからない。
恐怖感の方が大きくてガタガタと震えた。
「血も止まったからね。大丈夫ですよ」
小さい子どもを宥めるように優しく言って震える手を握ってくれた。
優しい手に何だか少し安心した。
息がうまく出来なくて咳こんでしまうと
「大丈夫ですよ。ゆっくり息して下さいね」
黒埼さんが何度も優しく言葉をかけてくれた。
