アドレス帳を見ていて
「あっ」
思い出したことに慌てた。
「どうした」
一斉にみんながこっちを向き
「明日、佐和子さんのとこ…司の家にお花の入れ替えに行くんだけど、この顔だよ…どうしよう。マスクで隠れる?」
「結衣、お袋は極道の女だよ。下手な嘘はばれるぞ」
「由香里さんもたぶん来る…。食事に行く相談しようって言われてる」
「…っていうかその前に店に行ける顔じゃないと思うよ」
「ハッ!そ…そんなに悲惨?」
「腫れはひくだろうけど内出血がどの程度になるか」
「腫れがひいたらコンシーラとかでどうにかする。マスクもする。転んだって言う」
原因は何であれ転んだ事には変わりない。
忙しい最中に休みをとるわけにもいかないから、腫れがひくのを祈るばかりだ。
「とりあえず、それで通すか。バレるとややこしくなんぞ」
「間違いない」
「が…がんばる」
それから、大和さんと春香さんと一緒にタクシーに乗り
遠回りなのに私をマンションへ送り届けると2人は帰って行った。
