ガサガサ トントン
本を整える音が木霊する
床に山積みだった本たちが、三十分そうじをしただけで、こんなにも片付くとは……
掃除って楽しいね。
うん。
だからといって、習慣付けようとは思わないが。
「ふぅー。押入れ行きの本はこんくらいかな?」
ホントはどの本も押入れ行きにはさせたくないのだが、入れとかないと……
ほんと、今のところ世界一怖いものがやってくるから
「はぁ……ここも少し片付けなくちゃね……」
部屋も散らかってんなら押入れも散らかってるよね
押入れを開いて現状確認した時の憂鬱さと言ったら……
まぁ、憂鬱だろうがなんだろうが片付けないと私の身が危険に晒されることはまず、間違えない
と、押入れ内を整頓していると、遠くから
「翔太!!掃除しろっていったでしょ!?あん??」
と、もう不良化しているお母さんの声が聞こえる
遠くからでもめっちゃ怖い
まるで自分が怒られているかのような……
これは、さっさと片付けないと私も翔太と同じ目にあう!!
でも、このままで、現時点でこの有様なこの部屋を片付け終わることができるのか
頼む!翔太!時間稼ぎを!!
そんな人の不幸を願いながら押入れの掃除を続けていた
そして、押し入れで久しぶりの出会いをする
「あ!この本探してたよー!」
…………
「はっ!」
私が本から目を上げた時すでに遅し
お母さんの足音であろう、音が私の部屋に向かってきていた。
美咲の部屋では立ち止まらなかったの!?
いや、気づかなかったんだ。
だって、あの美咲が。他のどんなこともできる美咲が、唯一できない掃除に関してお母さんにとやかく言われないはずがない
なにこの、本を読んでる時は周りの音が聞こえないスペック!
いらねぇよ!
咄嗟に読んでいた本を閉じ、全然進んでない押入れ掃除をやっている振りをする
パタ……パタ……パタ。
お母さんのスリッパの独特な音が私の部屋の前で止まる
きゃぁぁぁ!!
ほんと、今までありがとうございました。
風早美冬。ご臨終です。
ガチャ
自室の扉が開かれる
心臓が痛いくらいにドキドキとなっている
これは一種のホラーなのだから
あえて目を合わさずにガサゴソと手を動かす
そして、あくまでも平静を装って
「ど、どうしたの?お母さん。掃除なら進んでるよ?」
平静を装えてない。
声が震えた……
そして、起こった時の世界一怖いお母様が口を開く
「お母さんが見ててあげるから掃除しなさい♡」
♡をつけて可愛くしても怖いです。
お母さん。
もうこれは逆らえらるはずもなく
「あ、有難うございます」
と、言うしかなかった。
お母様はベットに腰掛けなさって私を見ておりました。
私は、もう、息をすることすら許されていないかと思うくらいの状況下で掃除を進めておりますと
見たこともない箱を見つけたのです。
縦15センチ横30センチの長方形の箱で、装飾などはされておらず木目がなんとも、オシャレの箱でございました。
私は押入れにこんなものをしまった覚えはありません。
そして、私は恐る恐るお母様に聞いてみました。
「あ、あの……この箱何だか知りませんか?」
きっと私を罵倒する言葉が帰ってくること間違いありません。
でも、予想とは違って
「あ……。お、お母さんも知らないわよ?でも、それは元の場所にしまっておいた方がいいわ。もしかしたら、" 思い出す"かもしれないから」
そう言ったら。
でも、そのお母さんはさっきまで殺気が溢れ出していたお母さんとは違って少し慌ててるようだった。
「そっかー。ま、またしまっとくよ。」
そう言って、私は心に少しの引っかかりを感じつつもその箱を元の場所に戻した。

