出会いの本〜出会えてよかった〜



結局、話が終わったのが12時。

優しい優しい章一さんが昼ご飯をご馳走してくれ、昼ごはんの後は本を読み漁っていた。



そして、なんだかんだで水守宅を出たのが5時。

あたりは夕日がオレンジ色に照らしている。

今日も家まで水守に送ってもらっていた。

この山は危険だからって。

なら山の出口まででいいのでは?

いやいや、きっとこれは彼の優しさなんだよ。

なんだかんだで狙われてる身の私を守ってくれるらしいからね。


2人は沈黙で歩いていた。

その沈黙を破ったのは水守



「あ、うちには勝手にくるなよ?」

「許可なしで押しかけたりはしないよ」

そんなの当たり前。男子の家に許可なし訪問はさ。

幼馴染かっ!ての。

「え?いや、それもあるけど、うちの家は一定の場所にとどまってないから、お前だけで山に入ると帰って来れなくなる」

「まぁ、それは薄々勘付いてたけど」

前は3分で行けた場所が今回は10分もかかったわけだし。

え?でも

「あんたが家に帰る時はどうしてんの?必ずしも近くにあるわけじゃないんでしょ?」

やっぱりそれが一番の疑問。

「あー、それは、まぁ、俺らは呼び出せんだ。」

「ほぇ〜すごいね」

ほんっと、なんでもありだね



そんな話をしてると我が家が見えてきた。

「あ。送ってくれてありがとね」

「おう」

私はお礼の意味も込めて家族以外の前では見せない笑顔を水守に向けた。


すると

「お前、笑えんじゃん」

なっ!!

「失礼な!笑えるわよ」

本を読むだけの人形じゃないのよ


「笑った方が可愛い」

水守がもごもごと何か言った気がした


「なんか言ったー?」

「メガネ外した方がまだましっつった」

「メガネ外してもたいして変わんないけど」

「メガネって地味の代表すぎる」

「全国のメガネ民に謝れ」

「いや、メガネをかけて本が好きで、髪を結んでるやつ」

「それってもろ私じゃない!」



私の大きな声が我が家周辺に響き渡り、その声を聴きつけた弟に2人でいるところを目撃されてしまうのであった。