【涼太side】
 俺は復讐した。しかし、なぜか落ち着かない。

俺はロボットになったときのことを思い出していた。亜魔野さんがある部屋へ案内してくれた。物が何一つない部屋で、壁が真っ白で床はフローリングだった。そこで俺は数秒目を閉じていた。そして、目を開けるとそこはその部屋ではなく、木材の建物の目の前だった。
「ここ、どこだ・・・?」
独り言をつぶやいていると、近くを男の子が歩いていた。その子の数メートル先にもう一人男の子がいた。よく見ると彼らはとても顔が似ていた。
男の子が勢いよく叫んだ。
「じゃあ、またあとでな!涼太!」
その子は走ってどこかに行ってしまった。俺のことか?と思ったがどうやら違うらしい。もう一人の男の子が走っていく男の子に手を振っていたのだ。気づかなかったけど、あれはどうやら俺なのかもしれない。それならさっきの子は賢人か?
俺はそれを確かめるために彼に近づこうとする。その時、なにかの気配を感じて俺は後ろを振り向いた。建物の入り口のところに黒い和服、いや洋服かな?まぁ、少女が立っていた。少女は眼帯をつけているがもう片方の目でこっちをじっと見ていた。俺が少女を見ていると、大きなくしゃみが聞こえてきた。それはさっきの彼だった。すると少女は彼を見てくすっと笑うと建物の中に入っていった。
そのあと、彼についって行ってみるとなにもない草が茂っている場所で突っ立っていた。すると、誰かの声が聞こえてきた。
「ごめんね、またせちゃったね。」
俺は思わず後ろに下がってしまった。それは佐未だった。
「お前か、この手紙をだしたのは!ちゃんと名前を書け!あと、字がキレイすぎだ!(怒)」
そこか!!
「いやぁ、ごめんごめん。僕の名前は佐未。普通の人に見えるかもしれないけど、実は君たちと結構似てるんだよ!」
「なんで、お前と俺が似なきゃいけないんだよ!お、お前まさか・・・!?」
急に彼の顔が真っ青になった。すると、晴れていた空が急に曇りだした。同時に笑っていた佐未がだんだん無表情になっていく。
「そうだ、君の両親は今頃天国にいるよ。僕が伝えに来たのはこれを教えるためだけだから。」
そう言い残すと消え去ってしまった。
「なんだよそれ・・・もしかして!?」
なにかを思い出したかのように彼は一生懸命どこかに走って行った。
俺もできるかぎり速く走って彼を追いかけると、彼はある家の前で止まっていた。
家の中をのぞくとそこには彼の、いや俺の両親だと思う人が凍死していた。無表情で立ち尽くしている彼に近づいてくる影。その人が彼の肩をぽんとたたくと彼は静かに振り返った。そこにいたのは亜魔野さんだった。
「君が涼太くんだよね?いやぁ、本当に賢人くんと顔が似てるなぁ~」
「っ、お前誰だよ。お前が俺の父さんと母さんを殺したのか!?」
「いや、違うよ。君の両親を殺したのはたぶん・・・僕のライバルの仲間かな?そうだ、自己紹介をするのを忘れてた!僕は亜魔野」
彼が怒っているというのに亜魔野さんは笑っていた。
でも、彼は亜魔野さんを見て殺すような人ではないとおもったんだと思う。
「俺になんのよう?」
「実は、賢人くんには言ってあるけど、僕と一緒に来てくれないかな?」
と、笑いながらも少し真剣な亜魔野さん。
「本当にお前が殺してないなら行くけど、賢人は?」
「賢人くんは来ないって言ってるけど、きっと君が来てくれたらたぶん来てくれるよ!にしても、双子でも性格は少し違うんだね」
「あぁ、性格なんかまったく違うよ。賢人は頭がいいし足も速い。だけど、俺は逆。だから、周りの人たちは俺と賢人をまったく違う目で見てくる。でも、俺は絶対に賢人のことを恨んだりはしない。だって賢人はいつも俺に優しくしてくれる。そうだ、俺にとって賢人は一番の恩人だ。」
彼はやっぱり俺なんだ。だって今でもそう思ってるから。
「そうだ!話の途中なんだけど、僕さ賢人くんに涼太くんはあずかっておくってこと言っちゃったんだ(笑)」
「・・・わかったよ、行けばいいんだろ?」
その後、森の奥にある家に入っていった前の俺と亜魔野さんはいつの間にか仲がよくなっていた。そうしていると、賢人が来た。
ちょうどその時だった。急に目の前が真っ暗になって、気がついたら元にいた部屋に戻っていた。となりには亜魔野さんが立っていた。
「これが亜魔野さんの力ですか?」
「まぁ、そうだけど・・・なんかロボットになってから口調変わったよね(笑)」
と、あのときと同じ笑顔をみせていた。
「あと、あの後のことは賢人から聞いて」
それだけを残して亜魔野さんは部屋から出て行った。
【亜魔野side】
 僕は今、彼らの話を聞いている。
どうやら涼太は佐未を倒したようだ。
「なぁ、なんかおかしくないか?」
「なにが?」
「だって、あいつらのことはよくしらないけど俺たちロボットは拳銃を一発撃たれただけで倒れるようなものなのか?それにあいつを倒したときにだれかが建物の上からこう言ってたんだ。」
と言うと少し声を変えてこういった。
「『お前らの“復讐劇”はすぐ終わる、いや終わらせる』って。あいつは絶対に天莉軍の誰かだ!」
「でも、そう勝手に決め付けるのは・・・」
「いや、俺確かに見たんだ!そいつの右首になにかが書いてあるのを!」
それを聞くとみんなすごいびっくりしていた。僕も少々驚いた。
じゃあ、天莉の狙いはなんだ?するとうしろから亜土さんの声がした。
「なるほど、そういうことか・・・。あいつもすごいロボットを作ったものだ。でも、まだまだだな・・・。」
亜土さんは自武さんが考えていることがわかるらしい。そして仮面をとっている。
「亜土さんの素顔、久しぶりに見ましたよ」
【???side】
「あ~あ、また負けちゃったよ~。本当にこれで大丈夫なの?」
と、いつもは笑っている維安が不安そうに言う。
「あぁ、大丈夫だ。こっちだってちゃんと作戦はたててある。」
「お前、いったいなに隠してるんだ?」
「まぁ、いつか気が向いたら話す。」
この作戦は今話したら失敗に終わるだろう。
すると、モニターに自武さんがうつる。
「・・・・あ、ごめん。」
「なんだあれ?」
と、亜久里が言うとドアが開く。
「自武さんは忙しいんだ」
「Zzz・・・!!!???」
だいたい寝ている帆州が急に起き上がる。それと同時に部屋中が静まる。青い瞳、無表情の顔、高い背、そして右首に「S-150」の文字。そう、羽江留さんだ。
「自武さんから伝えといてくれって言われたから来た。あの2人はもうすぐ帰ってくるそうだ。あの2人が帰ってくるまでに全滅するなよ」
まぁ、そろそろ帰ってくるとは思っていたけど・・・。
「いくらリターンがいるからってすぐに負けるな。少しくらいはダメージあたえとけ」
えっ、自武さんが言っていた事と違う・・・!
「っ!!??」
俺は思わず羽江留さんに文句を言おうとしたけど、うしろから口を押さえられる。そんな間に羽江留さんは部屋から出て行ってしまった。
「っ、時未、なにするんだよ!?(怒)」
「お前こそ忘れるな。羽江留さんはサイレントだ。お前がさっき大声だしてたらいったいどうなってたか・・・」
そうだ、羽江留さんの超能力はサイレントだった。
「・・・悪かった。で、時未、お前はどうするんだ?」
「俺は、佐未の敵をとってくる。じゃあ、な。」
そう言うと、瞬きする暇もない間に時未は部屋から出て行った。
その時、窓の外から雪が降っているように見えた。きれいだな・・・。
「曇りのち、雪か・・・。」