―――深夜 一時。

ウィリアム・フォード家
の者は 皆、寝静まった
中サユカは、何事も無かった
かの様に スタンに用意されて
いた自分の部屋へと辿り着いた。

部屋のドアを
開けようとした瞬間…
内側からドアが開き、
彼女を待っていたカイルが
にこやかな顔で 彼女を迎え入れる。

「おかえりなさいませ。サユカ様。
キングのご様子は 如何でした…?」

深い溜め息を ついた
サユカは、部屋に入り
早々 ソファーへと 腰を下ろした。

…何故か チャッキーの
彼の姿が見当たらなかった。
一体、何処へ行ったのだろう?
しかし 別段、サユカは
気にも止めてはいなかった…。

カイルは、サユカの
溜め息を聞きながら 部屋の
ドアを閉め、念のために 鍵も
閉めると 彼女へ静かに歩み寄る。

「もし… 明日、
あのまんま スタンが目を
覚まさなきゃ、ヤバい事になる」

“コト…”

カイルは 彼女が好む、
エル・ディアブロ(ノンアルコール)を
部屋に 設置されているBarから、僅か
数秒足らずで作り 彼女が座るソファーの
テーブルの上に エル・ディアブロの入った
ワイングラスを静かに置いて、

「…何か 問題でも?」

「チャッキーが
スタンのウォッカに、
大量に睡眠薬を投入したの」

サユカは 一口…
ノンアルコールの
エル・ディアブロを飲み、
側に立っているカイルを見る。

…暫く、考える
ポーズをしていた彼
だったが サユカを見て、

「成る程…。
睡眠導入剤、ですか。
チャールズも又 ろくでもない
調教をキングにしたものですね」

心の中では 笑って
いるだろうと悟った
サユカはカイルを一睨み利かせ、

「笑ってる場合じゃない。
“人形が睡眠薬を
 ウォッカに投入した。”
…疑われるのは、お前か
それとも… 俺か…。人形が
そんな事したなんて…、誰も信じないわ」

「…ですが サユカ様。
キングは、睡眠薬程度では
死なぬ筈は無いかと思いますが?」

“ポチャン…”“ジュワ…”

いつの間にか
先程 彼女が、床に
投げたタブレットが
ケース事テーブルの
上に 置いてあったので
彼女は、ケースから二錠…
取り出して ノンアルコールの
エル・ディアブロのワイングラスに
タブレットを溶かすかの様に入れた…。

ちなみに、
完全覚醒して
しまった彼女には
既に タブレットは無効化…。
元に戻る訳でも無く、逆に
悪魔の部分を引き出す効果も無い。

悪魔の部分を引き出す
というのなら 契約者であり
“従者=シュヴァリエ”の
カイルの血を飲めば 神以上の… 
世界を滅せる力を得る事が出来る…。

スタンも…
エリーも…
アルスも…
クロセルも…
フェイトも……

サユカ“その気”に
なれば、糸も容易く 消し去る
事が、出来るのだが 彼女の力を
使わずとも、禁忌・悪魔の契約をした
カイルの力さえあれば これも、容易い事…。