“ソッ…”

男は 静かに サユカに
手を差し伸べ、彼女は
その手に自分の手を重ねた。
サユカの手の甲に キスをした
男の指を、口まで持ってゆくサユカ…。

“カリッ…”

牙で噛まれた男の
指から、赤い血が 流れた……。

「…もっと ちょーだい?」

「仰せのままに」

“パッ…!”

なんと 停電していた
シャンデリアから、電気が
復旧したのか 電気がついてしまう。
それと共に、リビングの扉の封印も
解かれた様だ。チャッキーは 廊下から、
バタバタ来る人の気配を察して

「おい、お涙ちょうだいの
再会してる暇はねぇぞ サユカ」

それを聞いた 男は
眼鏡を上げ、コートを
脱ぐと サユカの前に立ち上がり、

「…チャッキー。嫌“チャールズ”
貴方は ソファーに、人形の振りを
していて下さい。サユカ様 ご心配無く…」

「………?」

“バンッ!”

「サユカっ!!!」

扉を蹴り破る様にして
先ず スタン、ジィ それに続き
四・五人のガタイのいいSPがやってきた。
チャッキーは 男の言った通り ソファーへ。

「カイルッ……!
なにやってんだっ?!てめぇっ」

ズカズカ入って来たスタンは
サユカと、その男…嫌 カイルを
引き離して、自分にサユカを抱き寄せた。

カイルは 胸に手を当て、
スタンへ頭を上げると……

「申し訳御座いません。
サユカ様が 少々…、手を
滑らせて ティーカップを窓に
投げてしまったもので。硝子の
破片で お怪我が無いか、見ておりました」

「…スタン。カイルを
攻めないでやって。俺が悪いんだ…」

「…怪我しねぇで 良かった。
今日はもう…、寝るぞ。サユカ」

「……え?…う、うん」

スタンは サユカを
お姫様抱っこし、リビング
から出る。それに続き SP…。
ジィは「破片一つ残さず 掃除するんじゃ」
っとカイルに命じ、リビングを後にした。

“トッ…”

チャッキーは 皆が
出て行ったのを見計らい
硝子の破片を拾うカイルへ、

「なぁ… もしかして
お前、サユカの執事として
この屋敷の人間 操作したのか?」

「ええ。その方が、
サユカ様の お側に居られますからね。
スタン・ウィリアム・フォードの記憶は
少々 書き替えに、手間取りましたが
ウィリアム・フォード家及び サユカ様の
関係者は、ほぼ全て書き替えてあります」