そして 暫くして、

「部屋まで運んでやろうか?」

「!……」

サユカの頭に
いつしか エリーと
会話した一部が思い浮かんだ。

『いい?サユカ。
男の思い通りに 事が運ぶ
なんて、もう古い考えよ?
女にだって プライドがある…。

いくら“好き”
“愛してる”って
言ってもね、恋人同士だって
既婚同士だって 愛が無くても、
あっても 簡単に、カラダを許す
もんじゃないのよ。だから、言葉で
操られ無い様に… 強い女になりなさい』

“キッ…!”

“スッコーン!”

サユカは いきなり
スタンに、近くにあった
石鹸を 顔面目掛けて投げ付けた。

「ギャッ!」

「出てけっ…!
このドS変態野郎ッ!!!」

スタンが 退場した
と共に、サユカは むっつり
した顔で、メイドが用意した
バスローブを着て、それから
廊下に居たメイドの案内に従い
ヘアサロンへ向かうサユカの心は…――。






























そうだ。

俺は いつだって
そうだった………。

スタンに甘え、
すがって 全てを……

ココロもカラダも…
アイツのもんだけど、
俺にだって プライドがある。

アイツ以外 俺にとって
あの手以外、必要なものは何もない。



けど
けれど…

弱いまま アイツの側に
なんか、居たく無いんだ。

それは……
『ウィリアム・フォード家』
の アイツの嫁として…。
そして『ジャン・クロード』
としてのプライドを…………。


時には 突き放す事
だって大事なんだ…。

抱かれるだけが 女じゃない。

俺は………、



スタンの花嫁に……。

ふさわしい女に……。






















強い女になる…!!!

強い女に なりたい!!!



























ヘアサロンに来た
サユカは 椅子に座り
ウィリアム・フォード家
一流の美容師が用意していた
メイク道具を目の前にして
鏡に写る 自分の姿を無表情で見ていた。

「では… サユカ様」

「待て」

化粧水をつけようとした
美容師に サッと、手を前に
突き出した彼女は 美容師へ…、

「スタンが好む化粧はしない」

「で… ですが、
坊っちゃんの命では…」

「毛先は カーラーで。
メイクは、キャバ嬢風に…」

「は……い…?」

突然の彼女の
要求に美容師は
戸惑った様子……。
その様子に キッ!っと
睨みを効かせたサユカは
鏡台にあった 鋭い鋏を
戸惑った美容師に向けると、




































「聞こえなかったのか!?
言った通り さっさとやれ!!
俺を誰だと思ってんだよッ!?
俺は…、ジャン・クロード!!
サユカ・ウィリアム・フォードだッッ!!!」