朝 7時――。

小鳥の囀ずりと共に
サユカ・ジャン・クロード
(今年 26歳。)は、寝室の
ベッドで 目を覚ました。

目を開けて、
ゆっくり背中を
起こすと 「ん~!」っと
両手を空中に上げ、伸びをした。

彼女の右指(薬指)には 以前
スタン・ウィリアム・フォード
(今年 28歳。)に、プレゼント
された カルティエのペアリング
が、少し隙間から照らす
朝の日差しで 光っていた。
無論、このカルティエのペアリング…。
スタンもサユカも右指(薬指)に
しており お互い、外す事もしなかった。
二人は アルスとエリーの
結婚後 付き合いを初め、
かれこれ もう、付き合ってから
3年位は立つだろうか?
スタンに「結婚しよう」っと
言われ、サユカは 慌てふためかない
訳が無かったが、スタンを「好き」
というよりも「愛している」に
近い 想いだった。又 スタンは、
スタンで サユカと同じ想いだった
訳で、プロポーズをしたのだ。

…暫くした後、
サユカは 彼のプロポーズに
顔を赤らめ、コクンと頷いた。
もはや 断る理由等、
何処にも、存在しない。

スタンは 目を丸くしたが、
次第に 涙を浮かばせて
大喜びをして、彼女を
空中に抱き抱えながら
婚約を承知したサユカに
感動し 永久の愛を結ぶ約束をした。
…そんな大喜びのスタンに、
サユカの方は 少し照れ臭かったが
これでようやく、スタンと
一緒になれるかと思うと
やはり 自分も感動せずには
居られず、スタンの大喜びを
受け入れ サユカも目に涙を溜め
「永久に愛してるよ。スタン…」
っと、自分から口付けを交わした…。

“ピルルル… ピルルルッ…”

あれやこれや思い出していた
その時 サユカのベッドの側から
携帯の着信音らしき音が聞こえてきた。
サユカは、直ぐ様スマホの画面を
見ると 着信者を確認する。

【着信 スタン】

“ピッ”

『おはよ(´∀`*)ハニー♡』

着信に応答したサユカの
耳に、明るめの愛しいスタンの
声が入ってくる…。彼の声で
ようやく 頭がハッキリした
サユカは、ベッドから立ち上がり
カーテンを開けると 眩しい
朝の日差しを浴び、クスッと笑うと

「おはよ♡ダーリン(*´ω`*)」

スタンからの
モーニングコールは
近頃では 当たり前であり
彼の声無しでは、機嫌良く
起きれなくなったサユカだった。

それは 婚約する前
からもモーニングコールは、
あったのだが 最初、ウザったい
位しか思わなかった彼女…。
のだが、今では朝 スタンから
かかってくるのが、当たり前に
なり 愛しいスタンの声無しでは
いつしか 気持ち良く起きれなくなった。

朝の日差しを浴びた
サユカは クローゼットへ
向かうと、スマホを片手に
器用に バスローブを脱いで、
いつものデニムのミニスカと
今日は少し 寒かったので
下にキャミを着て、パーカーを着る。

「スタン、もうオフィス?」

パーカーを着た所で、
電話の向こうの彼へ問う。
朝のコーヒーを飲んでいた
スタンは、カップを机に置くと

『ああ。今日は ちょい
寒いから、早出して もう居る』

十字架のピアスを
両耳に着け 左腕に
いつものブレスレットを
着けたサユカは「寒いから」
っという彼に、聞こえぬ様に
溜め息をついた。寒いのが
苦手な彼女は 少々オフィスへ
行くのが、苦痛になったのだろう…。
こんなに外は、晴れているのに
寒い中 外へ出るのが、嫌なのである。
しかし仕事もあるし 何よりも
スタンに会いたいし、アルスや
エリー… 二人にも会いたかったので
オフィスへ行かぬ訳にも行かない…。

だが 次の瞬間スタンが、

『ハワードに 迎え行かせよーか?』

「え…?けど…、
アイツだって 忙しいでしょ?」

サユカは、寝室を出て
冷えきった リビングへ出る。
ちなみ『ハワード』とは
ようやく最近になり、新米から
スタン直属のSPになった
黒スーツが 似合う、タフガイである。

『ハハ!気にすんなよ(^^)
風邪ひかせる訳いかねぇし。
それに お前は、正式に
ウィリアム・フォード家の
花嫁になったんだからな~。
送り迎え位 してされて当然よ!』

「ウィリアム・フォード家の花嫁」
の所で、サユカは顔を赤らめたが
暫く「う~ん…」っと唸り この寒い
中、外へ出るのが苦痛なのが嫌だった
ので スタンの言葉に甘え、

「…じゃあ… 頼もうかな(>_<)」

『りょーかいッ!
ちょい 待ってな(^^)
ハワードに、電話する』

“ピンポーン…”

その時だった。
スタンが ハワードに
電話する為に、電話を切った
途端 サユカのマンションの玄関
から、チャイムが鳴った音がした…。

「こんな朝から…。誰だ?」